革用防水スプレーの効果と、経年変化へ与える影響

防水スプレー

こんにちは、cobalt leather works のクリモトです。
今日は久々にレザーケアブログの更新です。

当店で使用している革は「ベジタブルタンニン鞣し」という区分に大別されますが
特徴として、水気の影響を受けやすい。という点があります。
特に新品のレザーアイテムにとって、水分は大敵になり得ますね。

そこで本日は

  • 防水スプレーってよく見かけるけどどれくらい効果があるの?
  • 実際吹き付けると革の表情は変わってしまう?
  • 経年変化への影響は?

などなど、これらの疑問に対して
当店のお財布を使って実験しながらご紹介していきたいと思います。

プエブロのケア全般はこちらをご参考ください▼

プエブロ レザーケア

プエブロを使い続けた革職人が教えるお手入れ方法

濡れてしまった時の正しいケア方法はこちら▼

雨の日のレザーケア

雨の日のレザーケア|水分は「拭き」取らない?正しい脱水方法とは

※この記事は当店の商品を前提に使用試験を行っております。
すべての革で同様の効果、影響があることはお約束できませんのでご留意ください。

防水スプレーの正確な効果と有効期間

防水スプレー

今回使用するスプレーは「コロニル オールマイティ防水スプレー」

使用する前に注意点が二つ。

「防水スプレー」と言いますが、実際の効果は「撥水」です。
撥水とは、「水を弾く」効果のことであり、100%水の侵入を防ぐものではありません。

例えば雨の日、傘をさすと生地は水を弾きますが、表面はしっとり湿ってますよね。
そんな感じで、水分を放置し続ければ最終的には染み込みます。

また、後述しますが、革の経年変化(主に色の変化)が多少ゆっくりになります。

そのため、革本体の経年変化を十二分に楽しみたい!
という方はスプレーしない方が良いと思います。

防水スプレーを吹き付けることで得られる効果

先ほどお話ししたように水分を100%防ぐものではありませんが
革にとって、「水を弾く」効果は大いに利点となり得ます。

水分を弾くということは革の奥まで繊維が浸透してこない、ということ。
よくある「水シミ」などの発生を防ぐことができます。

例えば汗など、水分に混じった目に見えにくい汚れなども防いでくれるようになります。

防水スプレーを使うタイミングと有効期間

革製品は新品であればあるほど、水による影響を受けやすいです。
(経年変化後は含浸オイルの影響で水に強くなります。詳しくはこちら

そのため、最も有効なのは新品状態で防水スプレーを吹き付けること。
ただ、防水スプレーにより、多少なりとも表情に変化がありますので、
「新品はしばらくそのままで使いたい!」というのもまた真理。
経年変化は個性ですので、自由に楽しみましょう。

また防水スプレーは一度吹き付ければそれでOK、というものではありません。

革製品の使用状況にもよりますが、
効果は次第に薄れていき、およそ1〜2ヶ月ほどで効果を失うと言われています。

革の経年変化に与える影響を考慮するならば、
新品時に一度吹き付けた後は
雨季に入る手前(5月後半〜6月前半)に吹き付ける
、といったサイクルがオススメです。

個人的な意見ですが、プエブロの場合はオイルをたっぷり含んだ革なので
経年変化をしっかりさせてあげた後はそんなに神経質にならなくて良いと思います。

防水スプレーの種類と選ぶ時の注意点

今回使用したスプレー以外にも「防水スプレー」として販売されているものは世に多く存在しますが
特に注意したいのが使用している成分について。

防水スプレーには「フッ素系」と「シリコン系」のスプレーがあります。
レザーケアに適しているのは「フッ素系」スプレーです。
「シリコン系」の防水スプレーは表面に膜を張り、革の風合いを損ねますので絶対に使用しないでください。

防水スプレーを使ってみよう!

今回実験に使用するのは新作のビルフォールドウォレット”quad(クアッド)”

防水スプレー吹き付け前

スプレーの吹き付けは対象物とおよそ20cmほど離れたところから、
満遍なく全体が湿るくらいに吹き付けます。

吸い込むと有害なので、必ず屋外で、さらにマスクをつけると良いです。

また、スプレー前に忘れてはいけないのが「ブラッシングによる汚れ落とし」です。

ブラッシングの手順についてはこちらのブログをご参考ください。

ではでは、早速スプレーを吹き付けると・・・

防水スプレー吹き付け後

こちらの画像のように、色が変わって少し滴るくらいに防水スプレーを吹き付けます。

スプレーすると一見してビチャビチャに濡れてしまいちょっとドキドキしますが、
むしろスプレーがかかっていないところは水が染み込みやすくなり、シミの原因になります。

しっかり全体に吹き付けても、すぐに浸透・揮発していくので安心してください。

だいたい10分間隔で合計2回吹き付けます。

防水スプレー後は完全に乾燥させてからブラッシングを!

まずは吹き付けから数分、どれくらい色が変わっているか、革の端切れを使用した比較画像です。
左側がスプレーあり、右側がスプレーなしです。

防水スプレー前後比較サンプル

スプレーの成分で湿っているため、色が濃くなっていますね。
完全に乾くまで10分くらい待ちます

表面を触ってみて湿り気がなくなったな、と思ったら仕上げです。

スプレーした水気でプエブロ本来の起毛が少し寝てしまいますので、
仕上げに乾燥してから軽くブラッシングしてあげましょう。

すると・・・

スプレー後のブラッシング

乾燥させてる間にちょっと陽が陰って写真が暗くなってしまいましたが
もうどちらが防水スプレー後なのか分からないくらいに元の風合いに戻りましたね。

ちなみに、スムースレザーの場合はブラッシングではなく、乾拭きやクリームケアが最適です。

防水スプレー前後での水滴耐久実験

随分と前置きが長くなりましたがここからがこのブログの目玉。
「防水スプレーにどれくらいの効果があるのか」という実験です。

まずは水滴を垂らした直後の様子

プエブロ水滴耐久実験直後

直後ではあまり差はありませんね。スプレーなしは気持ち水を吸い込んでいるような・・・?

この状態で3分間放置します。

プエブロ水滴耐久実験3分後

防水スプレーなしのサンプルは、分かりやすいくらいに水分を吸い込んでいますね。
一方で防水スプレーありのサンプルは多少吸い込んでいる感じもしますが、頑張って水気を弾いています。

ではこの水滴を吸い取っていきましょう。

この時、焦って布で擦るように拭き取らないように注意しましょう。
濡れた範囲が広がってしまい、また周囲の起毛が倒れてしまいます。

正しい水分の除去方法はこちらを▼

雨の日のレザーケア

雨の日のレザーケア|水分は「拭き」取らない?正しい脱水方法とは

プエブロ水滴耐久実験

ここでも防水スプレーの有無で差が出てきました。
スプレーありのサンプルはそこまで濃いシミではありませんが、スプレーなしは水滴の跡が強く残っています。

ここからしばらく自然乾燥で放置します。
(乾かす時、ドライヤーなどを使用すると革を痛めますので注意)

プエブロ水滴耐久実験

自然乾燥後の様子を見ると、スプレーありのサンプルはほとんど水シミ跡ができませんでした。
一方でスプレーなしのサンプルでは水シミが少し残ってしまっていますね。

防水スプレーの効果はご覧のように、しっかりと水シミを防いでくれています。

実際には圧力がかかったり、何かしらのトラブルで水がかかることが多いと思いますので
今回は好条件での実験でしたが、これだけでも十分効果が期待できますね。

もう一つのシミ消し方法とリスク

と、ここまで防水スプレーの効果でしたが、
実はケアブログに記載している裏技を使うとこんな感じに起毛を復元できます。

防水実験後裏技使用

プエブロの特徴である「起毛した銀面」は多少の傷やシミを隠してくれるのですが
その特性を復活させてあげればこのように水シミも目立たなくすることができるケースもあります。

とはいえ、この方法はケースバイケースで見極めが難しく、
銀面を傷つけるリスクもありますのであまりお勧めでできません。

そういった技術やリスクなしでもシミ防いでくれるので、
水気が怖い場合は事前に防水スプレーを吹いておきましょう。

防水スプレー後、1週間使用してみて

さて、冒頭でビルフォールドウォレット”quad(クアッド)”にスプレーをしてから1週間
ほぼ毎日ポケットに入れて使用したサンプルがどうなったかと言うと・・・

防水スプレー後経年変化

表情はほぼ変化なし。
毎日ポケットインで使用していることを考慮すると、色の変化が遅いのが分かります。

僕個人の感覚的に、ですが
フッ素樹脂による撥水成分が、革の奥に浸透しているオイルの上昇も抑制しているものと思われます。
UVプロテクトによる紫外線の影響を緩和しているのも影響がありそうです。

「革の色をゆっくり変化させたい」という方にはむしろオススメかもしれません。

さて、気になる撥水力ですが・・・

防水スプレー後1週間経過

おもむろに水をバシバシかけてみましたがしっかり弾いてくれます。
すごいぞコロニル。

まとめ

さてさて、「防水スプレーの性能実験」いかがでしたでしょうか。

まとめるとこんな感じですね。

  • 撥水効果はお墨付き
  • 最も効果的なのは新品の状態でのスプレー
  • 効果は1〜2ヶ月で切れるので雨季の前にスプレーは効果的
  • 経年変化(主に色味)に影響がある

経年変化は十人十色、それぞれの個性が愛着となって育てることができます。
防水スプレーも選択肢の一つとして「アリ」ではないでしょうか?

こちらのブログで、革小物の経年変化をより楽しんでいただけますと幸いです!

ではでは、本日はこの辺で。

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