革の経年変化について|2種類の鞣しと、変化の違い

経年変化

こんにちは、クリモトです。

突然ですが今年から始まります新コーナー。「Leather Tips!」

Leather Tipsとは・・・
Tips = もともとIT用語で、ヒント、小ネタ、秘訣、などの意味
Leather Tips! では革についてのちょっと面白い知識をご紹介していきます。

Tipsって最近ゲームとかやってるとローディング画面に出てきますよね。
「革の豆知識!」くらいに受け取っていただけますと幸いです。
できれば月イチで更新できたらなーと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします!

さてさて皆さん、唐突ですが
アンティーク家具のように美しく経年変化した革小物を育ててみたくはないですか?

磨り減った手摺、柱についた古傷、色濃くなった天板。
新品であれば「傷」や「汚れ」と捉えられてしまうようなものが
大切にされることで美しい個性となって昇華する。

革の経年変化にはそんな可能性があると信じています。

ほんの少しの革の知識と、素材を見る目があれば
そんな美しい革の経年変化が楽しめますので、今日はその辺をお伝えできたらと思います。

2種類の革|クロム鞣し? タンニン鞣し?

経年変化の話をする前に、必ず知っておいて欲しい知識があります。
それは革には大きく分けて2種類の鞣し(なめし)が存在するということ。

それは「クロム鞣し」と「タンニン鞣し」と呼ばれるもの。

そもそも「鞣し」とは
牛革は主に、食肉用に解体された牛の皮が原材料となっていますが
もちろんそのままではすぐに朽ちてしまいますので、バッグや財布を作ることはできません。

そういった生皮(原皮といいます)を薬品やタンニンなどを使用して
人間の生活に対応できる素材としての「革」を作る工程を鞣(なめし)と言います。

ちなみに鞣しなど、皮革製造を専門で行ってる業者を「タンナー」と呼称します。

順番に説明していきますね。

宝石のように美しいクロム鞣し|経年変化しない革

撥水スエード

クロム鞣しとは、「クロム化合物」を使用して鞣した革のこと。

クロム鉄鉱石、と呼ばれる資源が存在するように、鉱物由来の化合物。
鞣しとはあまり関係がないのですがクロムを含む化合物は鮮やかな色彩のものが多く
実は宝石で言うところの、ルビーやエメラルドにも、クロム化合物が含まれています。

昔は燃焼時に有害な6価クロムが発生してしまい、人体にも環境にも良くないとされていたのですが
現在では有害物質の発生しない3価クロムでの鞣しが主流。

ご存知の通り、宝石は何年経っても色褪せることなく美しい状態を保ちます。

クロム鞣しのイメージとしては宝石そのもの。
顔料で彩られた美しい色の銀面、汚れや傷に強いしなやかな質感。

そして、その特性である「変化しない」ことも受け継いでいます。

洋服などアパレルや宝飾品などと相性の良いハイブランドで使用されることが多い印象です。

見分け方のポイント
表面に光沢がある、柔らかくしなやかで、伸縮性がある、鮮やかな色彩で表面を「塗った」ような質感。

注意点
最近の合成皮革は質が高く、かなり質感をクロム鞣しに寄せてきています。
あまりにも安価なものや、わざとらしいシボ(シワ)には注意しましょう。

植物のように自然なタンニン鞣し|経年変化する革

タンニン鞣し革 プエブロ

タンニン鞣しとは、植物などに含まれる「タンニン(渋)」成分を使用して鞣した革のこと。

タンニンも種類豊富で柿渋やミモザなど、様々な植物のタンニン成分を配合しており
タンナーの数の分だけ、そのレシピがあると言われるほどに多岐に渡り
現存するもっとも歴史のある鞣し方と言っても過言ではないと思います。

ちなみに、タンニン鞣しの起源は古代エジプト文明と言われています!

植物は色づき、育つもの。
特に広葉樹は四季により様々な表情を見せてくれます。

タンニン鞣しはそんな自然の植物の特性を受け継ぎ、まるで「生きている」かのような変化をします。
変化しながらも、堅牢で長く使える鞣しとなり木材にも似たような特性を持ちます。

また、染料によるナチュラルな仕上げとなるので銀面にも生きていた牛の個性が出ます。

古くより、「道具」としてのカバンや馬具などに用いられ、質実剛健を体現します。

見分け方ポイント
染料を使用するナチュラルな風合いで、注意深く見れば毛穴や古傷などが目視できる。
オイルを含んでいるものが多く、角などのあたりが出やすい箇所は色が濃くなりやすい。

注意点
ヌメ(染色なし)の革は経年変化も楽しめますが、その風合いから初期は汚れなどが気になりやすいです。
やがて傷も汚れも馴染みますので、根気よく育てましょう。

まとめ

上記の内容を表にまとめてみましたのでご参考までに・・・。

特性タンニン鞣しクロム鞣し
経年変化するしない
個体差による個性強い(トラ・古傷)ほぼなし
色ムラ稀にありほぼなし
色彩染料による染色顔料による着色
耐水性弱い強い
伸縮性低い高い
生産コスト高い(1ヶ月かかることも)低い(最短1日)

革の経年変化のメカニズム|なぜ革は色づき、艶が出るのか?

さて、ここからが本題。
なぜタンニン鞣しの革は「経年変化」するのか。
また、「劣化」と言わないのは何故か。

それは先述した植物性の「タンニン」と、革にに見込ませた「オイル」に秘密があるのです。

タンニンによる変色の秘密

紅葉 タンニン

タンニン(渋)は、紫外線を浴びたり空気中に触れることで酸化します。
革の色が変化するのはこの「酸化」だったのです。

例えば広葉樹の葉をイメージしてみてください。
紅葉した葉はやがて茶色く変色していきますよね。

植物には多かれ少なかれ、タンニンが含まれており、革の経年変化と同じように色を変化させていきます。

オイルによる艶の秘密

経年変化|オイルによる艶

そしてもう一つ、重要なのが鞣し工程で含浸させた「オイル」です。

新品の革は、このオイルは革の奥の方で眠っていますが
使用することで、銀面に圧力がかかりオイルが表面に浮き出てきます。

このオイル成分が、経年変化後の透き通るような美しい艶となるのです。

また、経年変化させた艶のある銀面は
オイルによりコーティングされた状態となっているため、多少の傷や水気にも強くなります。

経年劣化?経年変化?

時折、「経年劣化」と言うワードを耳にしますが
僕は革の変化に対してはあまり使いたくないワードとして考えています。

劣化の意味を調べてみると・・・

劣化(れっか)とは、物理的変化などにより品質や性能が損なわれたり、技術革新でより優れた製品が出現することにより、性能が相対的に低下する現象である。

wikipediaより抜粋

と、あるように、経年によるものとしては「品質や性能が損なわれる」とされています。

ところが経年変化した革は決して性能を損なうことなく、むしろ手入れがしやすかったり、オイルコーティングにより強くなったりします。

またそれ以上に、「自分が育てた革小物」と言うものは何よりも代え難く
愛情のような親しみさえ湧いてくるもの。

そう考えるとやはり「経年変化」と呼びたくなるのは自然なことなのではないか、と考えてしまうのです。

育てることで生まれる愛着|レザーケアのご紹介

雨の日のお手入れ ブラッシング

革を「育てる」とはよく言ったもので
植物を育てるように、ゆっくりと、けれど確実に時の流れを刻み込むレザーアイテム。

生活に寄り添い、いつしかともに生きる相棒として
愛着のある存在になることでしょう。

当ブログサイトでは、cobalt leather works の商品をより楽しくお使いいただくために
こちらのページにてレザーケアの方法や、経年変化の魅力などをお伝えしています。

ケア&エイジング

leather care & aging|レザーケアと経年変化について

今後もケアブログや、今回のような「Leather Tips」を発信していく予定ですので
また覗いてみてくださいませ〜!

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最近更新遅れがちですが、今回もお付き合いいただきありがとうございます!
そろそろ新色発表などなど控えておりますので、来週も見にきていただけますと幸いです。

それではまた来週〜!