革の分割と名称について|部位によって異なる革の性質

革の分割と名称

こんにちは、cobalt leather works のクリモトです。

本日のLeather Tips!はいつも僕が使用している革(主に牛革)についての小話です。
革小物は見たことあるけど、素材としての革ってどうなってるの?という部分を
作り手ならではの観点からご紹介していきたいと思います!

Leather Tipsとは・・・
Tips = もともとIT用語で、ヒント、小ネタ、秘訣、などの意味
Leather Tips! では革についてのちょっと面白い知識をご紹介していきます。

素材としての革のカタチ

少し生々しい話になりますが
革は元々、生きていた牛の命いただくことで生まれる副産物

なので一枚の丸革(全裁とも言います)はそのまま、牛をお腹から開いた形をしています。

図にするとこんなイメージです▼

これ、図だと伝わらないのですが
成牛だと3メートルを超えることもあり、かなりの大きさです。

そのままだと販売が難しかったり、鞣し工程の都合だったりで
ここからさらに分割したものが流通していきます。

実は、普段我々が食べている牛肉の他にも
骨やゼラチン、油なども取れるので飼料や一部の医薬品などにも利用されています!

革の分割と呼び方について

革を分割する際は、気まぐれに裁断わけではなく
製品に合わせて部位ごとに分割してきます。

その際の部位の呼び方について、

ショルダー(ダブルショルダー)

部位的には肩の部分を分割した革。
「ショルダー」は馴染みのある単語なのでどの部位かわかりやすいですね。

肩まわりはよく動く部位なので、繊維も柔軟で、しなやかな強さがあります。
全体的に繊維が安定しており、小物からバッグの製作まで、幅広く使用することができる万能部位。

また、産地によっては背中に大きなトラが入ったり、個性の出やすい部位でもあります。

何よりも図のように正方形に近い形で取れるので、
歩溜まり(ぶだまり)が非常に良く、扱いやすいのが特徴です。

ちなみに、当店で使用しているイタリアンレザーもショルダーの部位を使用しています。

ぶだまり【歩溜まり】

「原料(素材)の投入量から期待される生産量に対して、実際に得られた製品生産数(量)比率」
(ウィキペディアより抜粋)

革業界では、一枚の革からパーツを裁断する際に、効率的に取れることを「歩溜まりが良い」と言います。

「ダブルショルダー」と「ショルダー」の違いについて

分割の際、背中から半分に分けることがあったようで
「ダブルショルダー」とは背中を跨いだ両側の肩のことを呼んでいたようなのですが
ここ最近ではあまり半分にしている問屋さんも見かけることがなく
「ショルダー」と言うとこの部位全体を指していることがほとんどです。

バット(ベンズ)

部位的には背中からお尻にあたる部分。

お尻側はあまり動くことがないのでやや硬め。
また、体全体を支える部位なので繊維もキメ細かく、堅牢な部位です。

バット(またはベンズ)は大きくとれるため半分に分割されることが多く、
ショルダーと違い「バット」と「ダブルバット」で明確に分けられていることがほとんど。
ハイブランドなどではダブルバットの背中部分を贅沢に使うことも。

安定した繊維の細かさや重厚な印象の通り、
カッチリした紳士物のバッグ(ダレスバッグやブリーフケース)に使用されることが多いですね。

ベリー

ベリーはお腹周りの部分。

柔らかいお肉が取れるので革としてはしばしば活用されないことも。
欧州では半裁で鞣すことはほとんどないので、あまり見かけない部位でもあります。

革としては繊維が粗く、緩く、伸びやすく、シボもランダムに多く入るため
安定して同じものを作ることは少し難しくなりますが、逆にその個性を利用して
ワイルドな表情の巾着や、フラップ部分に使用したりすることもあります。

近年、ベリーを独自の鞣し工程で加工した革も流通しています。
(革の名称に「○○ベリー」と表記されています)
プレス加工や鞣しに使用する素材などで他の部位と似た質感が表現されていますが
根本的な繊維の密度は粗いため経年による品質の変化は未知数。

繊維の向きを考える|目には見えない使用感

先ほどから「繊維」と言う単語を頻繁に使っているのですが、実はこれ、非常に重要な要素なのです。

革は繊維質が複雑に絡まりながら構成されており、その密度の高さや方向により
硬い、柔らかい、伸びやすい、伸びにくいなどが決まってきます。

革の繊維の方向

実際に肉眼では確認することができないのですが、イメージとしてはこんな感じ。

繊維の密度や特性については、前述したように部位によって特徴がでるのですが
製品を作る上で考えないといけないのが「繊維の向き」です。

例えば・・・
・繊維の向きと同じ方向(水平)
 →伸びやすい反面、クラック(ひび割れ)に強く曲げやすい

・繊維の向きに対抗した方向(垂直)
 →曲がりにくくカッチリとした作りができるが、伸縮性に欠ける

など、方向によって特性が微妙に違います。

安定した品質を求めるならカット革はNG?

ここで言うカット革とは「A4」や「A3」といった規格サイズにカットされた革のことを指します。
よく革材料屋さんやネット販売などで見かける定番サイズではあるのですが・・・
製作をする上では以下に留意する必要があります。

・繊維の向きが読み難い
・どの部位か確認する必要がある

なので、カット革を使用するときは以下に注意することを心がけましょう

・繊維の向きをしっかり確認する→折り曲げる、少し引っ張る、などで確認ができます(要・経験)
・部位の確認→販売元に聞く、革のブランド名などで検索して元々の部位を調べる

繊維の向きの確認は慣れるしかないのですが、確認ができれば上手に使えますし
何より手軽に購入できるサイズと価格帯なので趣味でクラフトをされる方にはお勧めです。

ちなみに・・・
カット革はそれだけ手間とロスが発生するため
ds単価も倍近く変わってくることもあるので注意が必要です。

番外 「床革」とは?

革に少し詳しくなってくると、「床革」という単語を耳にすることがあると思いますが
「床」ってどの部位なのでしょうか?

ここまでは「面」で分割した革のことをご紹介してきましたが、床革は「層」で分割した端材の部分を指します。

革の層 床革

残念ながら廃棄されてしまうこともありますが、当店では芯材に使用しています。
銀面と比較するとどうしても強度はありませんが、
繊維の構造は非常に優秀で、薄い革に仕込むことで十分な強度をつけてくれます。

あとがき

さてさて、本日のLeather Tips!はいかがでしたか?
皆さんが何気なく使用している革製品も、実はこんなことを考えながら製作されている、ということが
伝わりますと幸いです。

自分で言うのもアレなんですけど、本当に手間暇のかかる素材です。

ただ、素材ならではの味と質感、経年変化で変化する様子他にも様々な魅力がありますが
時間と手間をかけるだけの価値があると、僕は信じているのです。

それでは、本日はこの辺で!

三寒四温で体調を崩されませんように。今週もどうぞ宜しくお願い致します!

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