こんにちは、cobalt leather works の栗本です。
今日はいつもの「経年変化の様子」とはちょっと違った切り口からのお話です。
(少しだけレザーケアの内容も含みます)
さてさて、「経年変化」というと見た目の変化に注目しがちですが、その性能も変化していくことをご存知でしょうか?
当店では主に「フルベジタブルタンニン鞣しのオイルレザー」を使用しておりますので、素材の説明から、その質感の変化について、ご紹介していこうと思います。
その他ケア関連のブログをこちらでご紹介しております▼
目次
革の層と含浸したオイルが与える経年変化への影響
素材として鞣された革を構成する層は大きく分けて3つ。表側から順番に「表皮」「乳頭層」「網状層」です。
ちょっと言葉だとわかりづらいので簡単な図を描いてみました。
こんな感じです。
基本的には「銀面」と呼ばれる表側の層の方から繊維の密度が高く、強度があると考えてOKです。
含浸オイルと書いた赤枠の部分について
実際には層になっていないのですが、オイルレザーは芯に近い部分にオイルを含んでいます。
このオイルが、使用していると圧力がかかり、だんだんと外側にも染み出ていきます。
日焼け以外で革の色が濃くなっていく理由は、内部に浸透したオイルが染み出してきているからなのです。
※表面側からケアオイルなどを塗っても同じように濃くなります
水を含んだスポンジを指で押すとその部分に水が染み出してきますよね。
イメージではそんな感じです。
実際に圧力をかけてみた|プエブロの場合
さてさて、論より証拠ということで実際にやってみましょう!
オイルや水気を何も含んでいない乾いた布などで当店で使用しているオイルレザーに圧力をかけていくと・・・
左半分が何もしていない状態で、右半分が摩擦により圧をかけた部分です。
少し色が濃くなってきているのがわかりますね。
実際にはここに紫外線による褪色なども加わるので一概には語れませんが、経年変化後の目安としても面白いかもしれません。
並べてみると鮮やかな色ほど濃くなる様子がわかりやすいですね。
ちなみに当店で使用している革は銀面をスクラッチ加工(真鍮ブラシなどで弧を描くように削る)をして若干毛羽立たせてあります。
圧力がかかると当然その毛羽立ちも寝ていきますので、より経年変化が楽しめる素材となっているのです。
経年変化がもたらす恩恵
ここまでは単純に見た目の変化ですが、では性能的にはどんな効果があるのでしょうか、というお話です。
耐久性の向上|キズに強くなる
使用しているうちにゆっくりと満遍なく圧力がかかっていくのですが、そうすると表面の繊維密度が圧縮され、硬質化していきます。
さらに、含浸しているオイルの染み出しによりコーティングのような光沢が生まれます。
このように光を弾くほどに光沢が出てきますが、特に追加でオイルを塗布したりはせず、皮脂や含浸したオイルでここまで育ちます。
さらに、このオイルは引っかき傷を簡単に消してくれるようになります。
ケアのブログでも書きましたが、こういった引っかき傷(画像左)くらいでしたら軽く揉み込んであげるだけで簡単に目立たなくなります(画像右)
ケア方法など、詳しい記事はこちらで▼
「プルアップレザー」と呼ばれる革があるのですがその原理に近いかもしれませんね。
防滴性の向上|カビに強くなる
理科の実験などであるように、油分と水分は混ざることなく分離します。
その原理と同様に、経年変化によりうっすらとオイルでコーティングされた状態の革製品は若干ではありますが防滴性能が高くなります。
新品の状態で水に濡れてしまうとやはりその部分だけ色が濃くなってしまうことがあります。
がっつり濡らすと一瞬でこんな感じに・・・▼
ですが、使用して光沢が出てきた頃合いからすぐには水を吸わなくなります。
このような感じで30秒くらい放置しても水滴の状態を保ちます。
また、万が一染み付きそうになっても、全体を水拭き→色の濃さを調節して乾拭き、といったケアもできます。
が、日常的な湿気から表面を守り、カビが付きづらくなる・・・といった程度で
水分は大敵であることに変わりはないので、なるべく濡らさないことが大事です!
あとがきとお知らせ
いかがでしたでしょうか?革を育てると見た目以外にも様々な変化がありますね!
そういった「見えない部分」も革の魅力なのでは?と思う今日この頃です。
使い込むことで愛着だけでなく、名実ともに「頼れる相棒」へと育つ革小物。
ぜひたくさん使ってその変化を楽しんでいただければ、と思います。
オールシーズン、革のある生活を楽しみましょう!
オンラインストアはいつでも営業中ですのでどうぞよろしくお願いいたします〜▼
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